「花を描くのが上手な学生を探してるんだ。」
同じ学科の同級生を介して知り合った友人から 久しぶりの電話をもらったのは確か…大学院二年の春。
ひとつ年上の山岸君はもう社会に出ていました。
それからほどなく、会わせたい人がいるという彼と 六本木駅で待ち合わせる約束をしたのですが
今では考えられないことに、その日の私は 作品のファイルも名刺すらも持たない”手ぶら”状態。
これから 私の将来に何が起こるのか、その日の私には何も解っていませんでした。
繁華街を少し入ると、今でもそうなのか…マンションの一室を借りたデザイン事務所が点在していて
夜の賑わいとはまた別の顔を見せていました。
何故そこに呼ばれたのか、今では定かではありません。
通された応接室の奥で 穏やかな笑顔で私を迎えてくれたのは 某大手ジュエリーメーカーの役付きの男性。
ちょうど当時の父親ほどの年頃に見受けられたけれど がらっぱちな父とも 大学で日頃接する教授先生達とも違う匂いのする 企業人としての地位を確立した人種との初めての対面は
多少の雑談の合間に 依頼内容の大まかな説明と、自分がその「ひとさがし」を頼まれた相手が プライベートでも信頼のおける友人であることを私に確認させるのみで 緊張などする間もなく終了。。。
こうして私はこの御仁の”お墨付き”を得て 麹町の旧日テレ通りに面した とあるアパレル会社へ
単身乗り込む事になるのですが・・・。〈次章へ続く〉
追記;当時の写真を探したのですが、何も残していませんでした。
こんな未来が待っているとわかっていたら
少しは考えたのかもしれない^^;
・・・・しまった。。。
何も考えてなかったことが ばれました。
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