2011年

12月

28日

Snow Flakes

"Snow Flakes"
"Snow Flakes"
-Snow Flakes- 

ロマンティック街道をテーマにした"Composition by KENZO"のDM(ダイレクトメール)で、添付の画像はすでに印刷物になったものです。
この絵が中折りになったカードの表紙のタイトルには'92-'93秋冬コレクションとあるので 描いたのは’92年のはじめでしょうか。

当時は原画にいちいちタイトルを付けることもなく納品していたので、タイトルは セカンドライフで過去のアートワークを紹介するようになって後付けしたものです。

蒼く冷えきった夜空から舞い降りて来たSnow Flakes
愛する家族の待つドアへと急ぐ人もまばらな凍る街。
家々の窓だけが幸せ色の光を投げかけています。
描きあげてみてとても好きになった絵のひとつでした。

KENZOさんからいただいたお仕事の画料は、大半が次の絵を描くときの資料(主に洋書の写真集・画集の類いです。)代に消えて行きました。
当時の円相場は1USドルが180円くらい。洋書は決して安い買い物ではありませんでしたが、ずっしりと重い洋書屋さんのバッグを抱え家路を急ぐ気分は格別で、そうして私の記憶の引き出しを広げてくれたその洋書たちは、今も作業部屋の本棚を埋める私の愛すべきコレクションです。

『ロマンティック街道』と言えばドイツ。ところがかの地を踏んだのは、カッセルと言う地方都市で行なわれる『ドクメンタ』と言う芸術祭を見るための旅だけで、実際には街並の風情など ほとんど味わうことなく南下してしまったため、この絵を描く際にも、何冊かの写真集を買い込み 美しい街並の建築様式や吊り看板のデザインに夢中でページを繰る日が何日も続きました。

 

この頃の水彩画は、大体いつも鉛筆で下書をした後 レタリングゾルという耐水性の墨でGペンやスプーンペンを使い線だけを先に描き、その上から水彩絵の具を薄くひいては重ねて行くのですが…
この屋根瓦とは随分長い時間格闘したおぼえがあります。

 

 

元々、建物の絵は苦手なんです。ちょっと凝った飾りなどがついていたりしようものなら、それが面白くてとことん書き込み とんでもない時間を費やしてしまう…その時点ですでに 金額の決まった仕事としては大失敗です。 

 

しかしこの絵で、私はどうしても描きたかったことがあったのでしょう。
それはきっと、誰の心にもあるささやかな幸せの灯りだったと思います。

透明水彩絵の具による水彩画を経験した方ならおわかりかと思いますが、絵の中で一番明るいのは、紙の白…つまり何も塗らない状態で そこに手を加えれば加えるほど、色は濁り抵抗感が出てしまいます。
ほんの薄いイエロー系の2〜3色を濁らないようにさっとひく。
それを魅せたいがために、時間をかけて描きあげた風景はただただ深い蒼の世界でした。

過去の作品をこうして自分自身で分析するのもたまには面白いものです。

当時の若い私が そんな計算をしながらこの絵を描いていたとは到底思えず、きっと、想うように画面を作る精神作業に必死だったことでしょう。
提出日の朝まで 延々と3mmx12mmほどのパーツを一つ一つ塗り重ねる作業…今の私に果たして出来るでしょうか……否。 (笑)